KENICHI OKI

INTERVIEW : 沖 賢一(画家)/ Kenichi Oki(Artist)

January 24th, 2013 Update / Author: misako

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カラフルな色彩と抽象的な形が特徴的な福岡在住の画家、沖 賢一さん。zineのレーベル・イベント10zineを通じて交流が始まったのですが、そのキャラクターや作品から感じる独特な世界観から、個人的に興味を持っている作家の一人です。
今回は佐賀のPERHAPS GALLERYで2012.10.6(土)-14(日)に行われた「OKI KENICHI 2nd Exhibition いろいろないろいろ」の際に沖さん、ギャラリーのオーナー・北島敬明さん、Prefab三迫の三人で話した模様の一部を、作品とともに紹介します。
text/photo: 三迫太郎

沖 賢一(画家) / Kenichi Oki(Artist)
1981年生まれ。2005年より本格的に画家としての活動を開始。2011年より福岡市中央区大名のセレクトショップGENUINEにて販売を開始。2012年、初の個展「直線で芸術は創れない。」と「OKI KENICHI 2nd Exhibition いろいろないろいろ」を開催。同年より福岡を拠点に活動するzineレーベル「10zine」に参加し、zineの形式でも作品を発表している。
http://okikenichi.jimdo.com
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三 今回の展示は全て新作なんですね。

沖 前回(「直線で芸術は創れない。」展)来てくれた方に、「これ、前の展示にもあったね。」って言われるのが少し嫌で。
それに全て新作の方が楽しんでもらえるかなと。

北 前回に比べると柔らかくなったっていうか。なんかもうちょっと、なんだろう…
前の方がドロッとしているというか、ダークな印象がある。

三 元々この作風になる前はどんな絵を描かれていたんですか?
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沖 この作品(騙されない人)に近い感じです。少し荒っぽい柄みたいな感じの中に目があったりとか。もっと余白が少ない作品でした。

三 ずっと顔モチーフで作品を作られているんですか?

沖 そうですね、顔と、たまに人の体も。目が無い作品が今までで一つだけあって…

北 それ以外は全部、目が…

沖 それ以外は、全部、目が(笑)
その時の気持ちとか、考えていることとかを描いているし、人に訴えかけるのに目の力って、すごく大事だと思っているので極力入れるようにしています。

北 一つだけ、目が無い作品っていうのは、何か理由があるんですか?
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沖 前回は目が描かれていない手の絵が一枚だけあって(この作品)、こんな感じで…(指を広げて)指の感じと脳の、うにゃうにゃした感じが似てるし、そのうにゃうにゃした部分がパッと開いた脳にも、開いた手にも見える作品を描きました。手に脳があったら画家はもっと直感的にというか、いい絵が描けるんじゃないか、と思って。理想の手みたいなものを、「画家の手」っていうタイトルで描いたんです。その一枚だけですね。

三 目の描き方は一種類で、微妙に変えたりすることはあるんですか?あえて同じように描こうとしてるのかな、と思って。

沖 まあ、基本的にはこういう目を描いているんですけど、前回の展示では違う感じの目が入った作品もありましたよ。ただ、どんな目を描くときも一つだけ決まりごとがあって。あの、麒麟っていう架空の動物がいますよね?

三 ビールに描いてあるやつですね。

沖 そうそうそう。あの麒麟を刺青で入れるときに目を入れちゃうと、飛んでいっちゃうっていう話を映画か何かで見て。画竜点睛っていうらしいです。なので、目だけはクレヨンで塗ってないんですよ。色を入れて完成させて、せっかく作品に込めた気持ちや考えが飛んでったら困るので。

三 なるほど。

沖 って、誰も気付かないっていう…(笑)。10人に一人ぐらいに聞かれます。
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三 この作品(メスとメス:写真左)が印象に残ったんですが、お話を聞かせてもらえますか?

沖 「メスとメス」は、整形した人って綺麗になってるじゃないですか?だけど、本人は自分にメスを入れたことを知っているわけで、もしかしたら自分を鏡で見たときに、こんな風に切り刻まれたような感覚で自分を見てるのかな、って思って。でも、やっちゃったなら、綺麗な顔で何も気にせず楽しく生きて欲しいと思うし、単純に美しいものは美しいし、自分を美しくしたいって強い思いも美しいと思います。僕はする気はないですし、コンプレックスも受け入れるべきものだと思ってます。ただ世間の整形へのイメージが悪すぎるというか、そこまで悪いことかな?という思いもあって作品にしました。他にも良いイメージがないことを作品として描くことで、少しはイメージを変えれたらって思って描いてる作品が何枚かあります。


三 どんなときに「これを絵にしようかな?」っていう気持ちが出てくるんですか?

沖 だいたい一人で居るときに考え込む時間を作ってます。人と会って話をしたり…例えば今日、三迫さんと話して一人になったときに三迫さんの言ったことを思い返すんですね、いつも。あーああいうことを言ってたなあ、とか。で、自分が共感したこととかを、作品として頭の中で形にするようにしてて。その中で形になるものとならないものがあって、形になった時点で下絵を起こして作品にします。だから、人と話す時間がすごく大事です。

三 それがネガティブな記憶じゃなくて、結構フラットな感じで出てきている印象があります。僕だったら自分がストレスを感じたりとか、嫌だなと思ったときに表現に結び付けようっていう気持ちが湧くんですけど、今の話を聞くと、客観的なのかなと思って。

沖 あー、客観的…なのもありますね。自分の気持ちも大事にしてますけど。なんか、自分一人で考えられることってすごく限界があるなあと思っていて、それだけで描くとなると…。

三 なんかそれ、分かる気がします。


* * *


三 他者と話している時に感じた感情や印象が絵になってる。

北 だからなかなか人物以外のモチーフには行かないんですよね。

沖 そこまでの力がまだなくて…

北 見たいなあ!

沖 シゲキバのイベント(※)の質疑応答でも北島さんに言われて、今まで全く考えなかったわけでもないけど考えてなかったところで。ただ、聞かれたことで考えるきっかけにもなって、この展示が終わったらチャレンジしてみようと思ってるんです。

三 ほうほう。人物以外の絵って言うことですか?

沖 そうですね。物でそれを表現しようと思っています。

三 顔を使わないで、感情を別のものに置き換えたりとか。

沖 うん。

※福岡・薬院にあるアートスペース「シゲキバ」では、「シゲキバ アルテ」という、それぞれが作品を持ち込みディスカッションを行うイベントが行われています。


三 ちなみにモチーフに男性じゃなくて女性が多いのには理由があるんですか?より他者的な存在だとか、男性だと自分に寄っちゃうからNG、とか。

沖 それはあるかもしれませんね。自分自身が男性だから、綺麗とか美しいと思うのは女性になっちゃうんですよね。自分自身にも女子っぽい部分があるから、もしかしたらそれも関係しているかもしれないですね。
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沖 二人展みたいなのもやってみたいですね。

北 野口さん(※)がぬいぐるみで半立体のものを作るとか、そういうのも面白そうだなって思います。

三 アニメーションになったりとか。動き出しそうな感じはあるんですよね。音楽的なイメージもあったりして。絵を描いてるときって音楽を流しますか?

沖 はい。だいたい流してます。一番筆が乗るのはダニエル・ジョンストンが一発で撮ってるやつ。白いジャケットで、本当に古いテープレコーダーのボタンひとつで撮っているようなやつがあって、本当に病気になりそうな雰囲気があるやつで。

三 あー初期のやつですね。名前は…

沖 えっとね…ゴソゴソ…これ(Yip Jump Music)です。


Yip Jump Music (Dig)

三 あ、これ僕も好きです。関係ないけど今、会場で流れているこれ(Upon This Tidal Wave of Young Blood)がClap Your Hands Say Yeahの曲では一番好きですね。

沖 これ…一番いいですよ。

三 ですよね!


Clap Your Hands Say Yeah

沖 これ(Clap Your Hands Say Yeah)も描いてるときに結構聴いてます。今回の展示では描いてるときに実際に聴いてる音楽を流すのがいいかなあと思って。

三 なるほどー。ふふふ。

沖 ふふふ。最初ファーストが出たときにすごくいいなあと思って。セカンドぐらいからはなんかアレってなって。

三 そうなんですよね。僕もセカンド以降は聴いてなくて。このアルバム「が」いいんですよね。

沖 ですよね。で、ソロも出したでしょ。

三 あ、そうなんですね(知らなかった)。

沖 それもあんまり…

※野口 剣太郎…福岡のアートディレクター&人形作家。10zineメンバー。今回はギャラリーに来たときに、沖さんの作品を立体化したブローチを持って来てくれたそうです。
http://shirokuro.jp

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三 作品はいつも額のサイズに合わせて描かれているんですか?トリミングされてるのかなあと思って。

沖 額に合わせてはないです。ケント紙でA3って言っても、実際にはA3じゃないんですよね。水張りする用に。

北 今回はポストカードとか、そういうアイテムを用意するつもりは最初から無かったんですか?カードなり、ポスターなり。

沖 ないっすね。その…そばちょこだけ。

三 そばちょこ?

沖 本当は出す予定だったんですけど、失敗しちゃって(笑)いろいろと手違いがあって..クレヨンが焦げ付いちゃって…

三 へえ、クレヨンでも絵付け出来るんですね。

北 そばちょこがあったらねえ…でも言っても仕方ないもんね…

沖 そうですね…
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三 展覧会の前に沖さんの自宅にお邪魔したときにも見ていたのですが、今回の展示で一番好きなのはこの作品(重たい頭)でした。

沖 普段は顔だけのものが多くて、それは顔だけでも表現できるものを描いているんですけど、顔より下の部分を描けるサイズってなるとなかなか時間がかかるんですよね。この絵は、僕が一番やりたいことが詰まってるんで、いい絵って言ってもらえるのは嬉しいですね。

三 顔ばっかりなのはどうして何だろう?と思ってたんですけど、そういう理由もあったんですね。

沖 この作品の全体を小さなサイズで描いてしまうと、何の魅力もないと思うんですよね。力も弱くなるし。顔だけでもダメですし。このぐらいの大きさはないと表現できないと思ったんです。本当は大きな作品をもっと描きたいんですけどね。詰め込める気持ちや考えの量も増えるので。
あと、これは自分の芸術に対する考えとはちょっと別の考えなんですけど、部屋に飾るにあたって小さいサイズでもいいんですけど、大きなサイズを飾ってもらえるのが嬉しいなあと思って。すごくいい家具とかは何もなくて、テレビとかしか無いけど、この絵があることで部屋が格好良く見えて、来た人が「 あいつの部屋の壁にかかってる絵、めちゃくちゃ格好良かったなあ。俺の部屋にかけても格好良くなるかなあ」って感じてもらえたらなあって思ってます。
三 さっきダニエル・ジョンストンの話も出てきましたけど、沖さんの格好良さって、他にどういうものに対して感じますか?

沖 格好良さ…人が作ったもので言うと、僕あんまり昔の有名な画家さんとかが作ったものや描いたものを勉強してなくて、好き!と思える作品を作っている人の作品だけは見るんです。その中で好きなのがフンデルト・ヴァッサー。画家なんですが、建物もやってたり、風呂敷を商品化してたり、いろんなことをやってた画家さんです。目茶苦茶で適当に作っていているように見えて、そうじゃないと思わせる世界観とか個性を感じるもの、そういうもの物に格好良さを感じます。
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三 テーマを決めて描くっていうことはありますか?

沖 この前のTOKYO ART BOOK FAIR 2012に出したzine(真っ白なリンゴ)のために描いた9枚の絵が初めてです。あれ、すごく実験的だったんです。結果がどうだったかはまだわからないんですけど(笑)、言葉を入れればよかったのかな、とも思うんですけど…実は絵本として作ったんです。でも僕は画家だし絵本作家じゃないから絵から物語を読み取ってもらいたいと思って、言葉は使いませんでした。でも、ちょっと難しかったかな、と思ってます。


* * *


三 今後はアルバスでも展覧会を行う予定があるそうですね。

沖 2週間ぐらいを考えていて、次は壁の一面に作品を集めてしまって、残りの壁を使って会期中に絵を描いてみたいと思ってます。毎日、同じ個展に行く人なんていないだろうし、一回で十分という人が普通だと思うんですけど、初日に来て下さった方が「最後の日にもう一回見てみたい。」「どう空間が変わっていくのか見てみたい。」とか、そういったワクワク感のようなものを感じてもらえたらいいなと思ってます。なので2週間ぶっ通しのライブペインティングをやりたいなと思っています。

三 写真に残していったら面白そうですね。

沖 作品は残らないですけど、そこでしか見られない…そういうことはやってみたいですね。もちろん画家として作品が売れないといけないっていうのもありますけど。そことは違って遊びというか。画家は芸術家でもあるので、作品を飾って売るだけじゃダメだとも思いますし。
よく酒井さん(アルバスのオーナー・写真家)に相談するんですが、厳しい方なんで、いろいろ厳しいことも言われます(笑)、真剣に受け答えしてもらっているから、なかなか「それいいね。」って言ってもらえないと思うんです。嬉しいことです。でも、あれはああしたほうが…とか、確かにそうだなって思うことも多いですね。

三 僕は普通のキャンバスじゃなくて木とか、別の素材に描いてみても面白そうだな、と思います。

沖 アルバスの壁に、紙とか何も貼らずにクレヨンで描いてみたいなと思ってます。壁がザラザラしてるから綺麗に色は出ないかもしれないんですけど。

三 さっき言われてた、大きな絵も描けますしね。


(2012.10.10 / at PERHAPS GALLERY)

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三迫 太郎(Taro Misako)
1980年福岡県生まれ。2008年〜フリーランスのグラフィックデザイナーとしての活動を始める。福岡発のzineレーベル「10zine」の共同立ち上げ、ひとりWebマガジン「taromagazine™」、周辺のさまざまな物事を編集する活動「Prefab」など、主にWeb上で活発に活動中。
http://taromag.misaquo.org